食べ物記者 齋藤訓之 のホームページ

卑劣なる者。汝の名はジャンパー也


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跳ぶよ
跳ぶよ

 東京では、街を歩いているとよくジャンパーに出くわすようになった。

 たとえば立ち読みをしているとき。ふいにこちらへ勢いよく近づいてきて、直前でステップを踏んで軽くジャンプし、私の直ぐ隣にストンと着地する。勢いに押されて、こちらが半歩ほど反対側にずれる。すると、彼・彼女は、私が立っていた位置にカサカサと移動して、そこから取りやすい本に手を伸ばす。

 これが「ジャンパー」。勝手に名付けた(ホッパーのほうがいいかな)。

 要は、こちらにちょっと場所を空けて欲しいのだ。私など旧人類なら、「すみません」「ちょっと失礼」など言って、相手に少し動いてもらうのだけれども、口を使うことを学習する代わりに、こういう冗談のような体術を開発し、身に付ける人が増えてきたらしい。

 書店で立ち読みしているときだけでなく、電車でつり革につかまっているとき、横断歩道を渡るべく信号待ちをしているときなどに、ジャンプされることがある。

 しかし、最近は私もだんだん慣れて来たので、ジャンプされても動じないようになってしまった。老化かもしれない。移動して欲しそうな人がいる気配に気付けば、もちろんちょっとずれてあげるのだけれど(そういう気づかいのやりとりって、立ち読みの面白さの一つでしょ?)、考え事をしていると気付かないこともある。

 そうすると、最近はもっとすごいことになってきた。「プッシャー」が出て来たのだ。こちらの脇の辺りに肩を入れて、押しのけるんだよなー。

 男子は力ずくで押してくるけれど、女子なら体をくっつけてくるだけ。見ず知らずの女性に体をくっつけられて、そのままでいたらそれは痴漢かアホなので、当然こちらは場所を譲ることになる。

 君たちね、「卑怯」という言葉を知っているかね? 世も末ですな、全く。

 口を使いなさい。口を。誰だってひとに親切にしたいんだから。

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