食べ物記者 齋藤訓之

農業、食品、外食に関するビジネスの記者・編集者、齋藤訓之(さいとう・さとし)のWebサイトです。

「そして誰もいなくなった」あの時……

 バブルの頃、外食チェーンに採用や賃金の取材に行くと、決まって出てきた話は「人手不足」「採用難」だった。当時、外食産業は“3K”(キツイ、キタナイ、キケン)の一つに数えられ、他業界に比べて新卒の応募が少なく、パート・アルバイトも集まりにくかった。景気がよくなればなるほど、他業界の募集は増え、それに伴って、外食はますます採用難に悩まされた。

 そんな中、外食チェーンのトップの何人かは、こう言っていた。「近く、必ず不況は来る。その時こそ、外食が採用を伸ばすチャンス。私たちはそれを待望している」。

 そして不況は来た。90年から株価は下がり始め、91年には地価も下落へ。それでどうなったか? 92年6月、外食チェーンの月商が軒並み前年割れ。入社希望者が来ないと嘆いていたら、お客も来なくなってしまった。採用云々どころではなくなったのだ。

 想像力が、ちょっと足りなかった。

 そして「景気回復」が喧伝される昨今、外食チェーンがまたぞろ「採用難」を嘆き始めた。「他の業種が採用枠を広げている。それで、いい人はよそに持っていかれてしまう」と言う。十余年経ってそういう話ではいけないのではないだろうか。

 就職先として人気のある外食企業もあるのだし。

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