食べ物記者 齋藤訓之

農業、食品、外食に関するビジネスの記者・編集者、齋藤訓之(さいとう・さとし)のWebサイトです。

普通の学校はないのか

[caption id="attachment_1164" align="alignright" width="144"]立派になってくださいよ(本文とは直接関係ありません) 立派になってくださいよ(本文とは直接関係ありません)[/caption]

 もう数年前になるけれど、市内の小学校を見学したときのこと。翌春、自分の子供が入学するはずの市立小学校だったのだけれど、あまりのでたらめぶりに卒倒しそうになった。

 何時間目かの予鈴が鳴った後、低学年のある教室の前を通りがかったところ、その教室はもぬけの殻だった。つれあいと、「体育の時間かな」と顔を見合わせる。

 すると、50歳前後だろうか、女性の教師がのろのろと教室に入っていく。3~4人の女の子たちがまとわりつくように、やはりその教室に入っていった。

「はて?」と思って見ていると、三々五々、子供たちが教室に入っていく。力のない、のろのろとした、ペタペタと足音を立てる歩き方で。

 予鈴からすでに10分近く経っている。座席は8割方埋まったが、まだ教室に入っていない子がいる。教師はせかす気配がない。教卓の辺りで下を向いている。

 それでも、ふと顔を上げた瞬間、いったん着席した男の子が3人ばかり、教室の後ろの扉から、ぴゅうと教室から出て行った。

「どこに行ったのぉ?」。教師は、手近にいる女の子に尋ねる。「トイレじゃない?」「トイレだよ」と女の子たち。廊下に出て、本人たちを呼び止めて問いただせばいいのに。それに、先生に向かって、その口のきき方はどうなのかな、その女子たち。

「はぁい……。はじめるわよぉ……」。弱々しい教師の声。誰も聞いていない。聞こえていたのは、恐らく教卓の前の数人の子たちと、廊下から見ている私たちだけだったろう。

 15分経過。やっと始まったらしい。教師が国語の教科書を持って読み上げているのに、途中から気が付いた。国語の時間だったのだ。しかし、その声のまたか細いこと。誰も聞いている風がない。

 子供たちは、椅子にきちんと座れない。姿勢が悪いなどは序の口。何人かは、後ろの子の机の上にケツを置いている。だから、教室は立体的な風景になっている。机に座られたら、怒れよ、少年。

 その間、ずっと私語が止まらない。ガタという音に教室の前方に目をやると、ある男の子がすっくと立ち上がったところ。すたすたと教室の後ろの方へ歩いていき、別な男の子の頭をペシリとたたく。たたかれた男の子は、一拍おいて立ち上がり、今度はまた別な男の子の頭をたたきに行く。そんな風に、席を立って歩く子が常にいる。教師には、それをとがめる気配が全くない。

「なんなんだ、この教室は」

 それ以上見ていられず、つれあいと、叫びたい気持ちを抑えながら、そこを後にした。

 他の教室の外の掲示板に壁新聞が張ってある。清掃工場の見学をした後、1人1枚の壁新聞を作って、全員分を張り出したようだ。眺めて、またあきれた。実に実に、誤字脱字だらけなのだ。多少の誤りはあってよかろうが、複数箇所の誤りを残した壁新聞が、いくつも張り出されている。

 人に見せるもの、外に出すものは、直すところは直して完璧を期しているべき。そんな訓練がない。教師が一人ひとりの作品に目を通したのかどうかも怪しいものだった。

 この見学の前から、つれあいは“お受験”なるものをさせようと言っていた。私は、「普通の学校でいいじゃないか」と乗り気じゃなかった。でも、この見学で悟った。うちの子供の場合、普通にしていては、普通の学校に入れなかったのだと。

© Satoshi Saito, Kosetsusha, Inc. All Rights Reserved.
No reproduction or republication without written permission.