食べ物記者 齋藤訓之

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小金井市のごみ処理施設放置問題 II

[caption align="alignright" width="150"] 「東京に原発を!」(広瀬隆)[/caption]

 実を言うと近所のことなので、気になっていた。例の小金井市のごみ処理施設問題。地元住民の間には、市の行政と議会のメンバーがいよいよ市中心部の大型マンション集積のど真ん中に決める気になっているのではという不安が広がっている。

「ある時期から急に情報が入らなくなったんだよ」と、問題の緑地からも近いある商店のオーナー。「あるお客さんが、『でも、あそこに決まった……』と言って、すぐに口をつぐんでしまったことがあった。箝口令が敷かれているんだね」

 大きなマンションにすきまなく囲まれた敷地に、ごみ焼却場ができようとしている。ここは第一小学校から150mほどの距離で、小学校の隣には図書館もある。線路を挟んだ隣には大型スポーツクラブもあり、いわば文教地区とも言えるエリアを形作っている。その中心だ。「東京に原発を!」という書籍があったけれど、あの本の表紙のようなイメージだ。非常に“フォトジェニック”。「あの開かずの踏切に隣接する場所」というフレーズも使えるし、これはテレビ受け間違いない。


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「シムシティ」でこの場所に工場を置くと、周りの建物はどうなるかな

 小金井市は、07年の閉鎖が決まっていた焼却場に代わる施設の計画を立てずにいた。言ってみれば、夏休みの宿題を前日になっても手を付けず、とうとう登校日を迎えてしまったのだ。それで現在自前の焼却場を持たないため、国分寺市はじめ多摩地域の多くの市と組合に、ごみの処理をしてもらっている。

 それをお願いする条件の一つとして、国分寺市には、今年8月中に、自前のごみ処理施設建設計画を示すことになっている。それで市は用地選定を(おそまきながら)急いでいる。でも、「あのマンション群のど真ん中に決めました」と言っても、まずあの場所への建設は実現すまい。したがって、国分寺市には空手形を切ることになる。そうなれば、ただでさえ怒っている国分寺市の市民はカンカンになるはず。

 実現すまい、というのは、このごみ処理施設のお隣さんになってしまうマンション住民をはじめ、地元住民の反対が強すぎる。そして、テレビ受けしすぎ、全国的に有名になりすぎる。

 公共工事を受けたくてしかたがないゼネコンも、さすがにこの建設には手を出せないはず。テレビで物笑いのタネにされるその現場のフェンスやゲートに会社のロゴが描かれ、現場事務所の上に会社の旗が翻っているありさまを株主にどう説明するか。CSR(企業の社会的責任)どころではない。「『東京にも置けるほど安全な原発』というのと同じように、安全性を確保する技術力(?)を訴えようとしました」なんて説明するのかもしれないけれど(しないか)、個人投資家はなかなかそうは取らないだろう。難しい技術を理解しようとするよりは、「金のためなら何でもやる会社」と理解するほうが、はるかにやさしいからだ。

 テレビで話題にならないように、裏で手を回すということも考えられはする。しかし、バブルの頃ならいざしらず、きょう日、広告も出していないゼネコンにテレビ局が気づかいをするかどうか。

 ちなみに、この問題の土地に隣接するマンションの一つに、稲葉孝彦小金井市長は住んでいる。説明会の会場、住民席の間でささやかれた「どうもそのイナバさんがこのマンションど真ん中案を薦めているらしい」という声に対して、別の人は「あのマンションはイナバさんの地元も地元。地元を裏切ることはないでしょう」と反論。またある人は「いや、『自分の住む家の環境を犠牲にしてでも小金井市のごみ処理施設問題を解決してみせる』というオトコギを宣伝する狙いがあるのかも」とも。すると、別なある商店のオーナーが「なんだ、知らないの?」という顔で、のたまった。「だって、イナバさん、国分寺に引っ越すんだよ」と。

 これ、本当かどうかは分からない。でも、その人の話を聞いて住民は開いた口がふさがらない状態。稲葉市長は、04年に武蔵小金井駅南口再開発の是非を巡って「民意を問う」ために辞職し、再選(四選)を果たしたオトコギが自慢。なので今回も、ごみ処理施設用地決定に際して辞職して見せなければ格好がつかないのだけれど、この不名誉な噂があるので五選は難しそう。

 すると小金井市のごみ処理施設問題は、この期に及んでまたまた白紙に戻るわけで、そうなるととどのつまり、国分寺市はじめ多摩地域各市町村の人たちから、小金井市民は「ごみのもと」&「空手形野郎」として嫌われ続けることになるはず。で、その怒れる近隣市町村の住民には、多くの小金井市職員も含まれると言われていて、事態はもう、筒井康隆級のドタバタ、横田順彌級のハチャハチャの様相を呈している。

 常識を超えすぎていて、テレビも敬遠するか。

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