食べ物記者 齋藤訓之

農業、食品、外食に関するビジネスの記者・編集者、齋藤訓之(さいとう・さとし)のWebサイトです。

ケニアの「これはなあに?」

 両替のために、ナイロビの銀行に入った時のこと。ガラス張りの窓口の中には、頼もしい体格の、上品な、それなりの地位にありそうな女性の行員が座っていた。その人との会話。

[caption id="attachment_1226" align="alignnone" width="560"]キリン横断中 キリン横断中[/caption]

――えーと、円をシリングに両替したいんですが(と1万円札を窓口のガラスの下に差し出す僕)。
「これはなあに?」(1万円札を取り上げて、裏表をひらひらわざとらしく眺めて、いたずらな目でこちらを見つめる)
――ああ、それは1万円札だよ。
「そう!」
――そうだよ。
「……これで、あなた、日本で何が買えるの?」
――そうだなー。
「車とか?」
――車は無理だよ! 車は、そうだなあ、これが200枚ぐらいいる。
「ラジカセ?」
――そうだなー。これが5枚ぐらいあると、まあまあのが買えるね。
「あなたが着てるそのジージャンは?」(といって、両替に必要な書類の準備を始める)
――ああ、これなら2着ぐらい買えるよ。
「日本はお金があるわね」
――そう、今はね。(バブルの絶頂期だった)
「お魚好きでしょ」
――え?(???)うん。魚は好きだよ。よく食べる。
「そうよ。日本人は魚をよく食べる。だから頭がいいのよね」(魚のDHAが脳によいとかと話題になった頃だった)
――そんなことないよ。頭が悪いのもいっぱいいる。
「もてるでしょ?」
――いや、からっきし。
「結婚しないの?」
――まだね。相手がいない。
「あら。いい? ナイロビにはいいコがたくさんいるから。お嫁さん見つけて帰るといいわ」
――ありがとう。でも、こんなやつ好きになるコなんているかな?
「大丈夫! もちろんいるわよ」

 不思議な会話だった。

 友人たちは、怪しい人物でないか、1万円札の意味がわかっているかを確かめるためにいろいろ聞いたんだろうと言う。僕もそう思うけれども、これもなんだか思い出してちょっとうれしい思い出の一つ。

 ちなみに、ケニア娘とは結婚しなかった。

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