食べ物記者 齋藤訓之

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ケニアの「シェルタリング・スカイ」

 朝、ホテルを出発したカーハヤは、ゆっくりとナイロビから抜け出し、路傍のバナナ園などを横目に見ながらスピードを上げていった。ふと、左側の車窓に目をやると、車と同じ高さに地面はなく、少し霞のかかったような空だけが見えた。体を窓に近づけると、数百m下に乾いた大地が果てしなく広がっているのが見えた。飛行機に乗っているようだ。

[caption id="attachment_1229" align="alignnone" width="560"]グレートリフトバレー グレートリフトバレー[/caption]

 カーハヤはグレートリフトバレー(大地溝帯)のふちに沿って走っていたのだ。太古、人間の祖先が旅した「大地の裂け目」だ。

 やがて車は、見る見る高度を下げていった。全地球規模の谷底へ向けて“着陸態勢”に入った。

「あそこへ行く」

 ジョゼフが指差した。はるか遠く、僕らが目指す“滑走路”は、最初とても小さな、青い点に見えた。

 車がそれへ迫るに連れ、青い点ははっきりと青く輝く湖として見えるようになってきた。そして湖水には、二重の白い縁取りがあった。

 湖水の畔に着いたカーハヤを降りた僕は、その白い縁取りの正体を確かめた。

 外側の縁取りは、真っ白な塩。それを踏みしめながら湖水に近づいて行くと、内側の白い縁取りが、歩いた分だけ湖の中央へへこんでいく。

 どこまでも長く、長く続く、フラミンゴの行列だ。

 矢も楯もたまらない衝動に駆られて、頭の真上を見上げた。白っぽく霞んだ空が、僕ら全部をひっくるめて覆い尽くしているのが見えた。

[caption id="attachment_1230" align="alignnone" width="560"]ナクル湖 ナクル湖[/caption]

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