食べ物記者 齋藤訓之

農業、食品、外食に関するビジネスの記者・編集者、齋藤訓之(さいとう・さとし)のWebサイトです。

ケニアの「オレのボトルだ!」

 ナイロビ郊外のガソリンスタンドにカーハヤを停めたとき、ジョゼフは僕と連れに「何か飲むか?」と聞いてきた。「コーラがいいか、『ファンタ』がいいか?」。

[caption id="attachment_1241" align="alignnone" width="560"]カーハヤからこんにちは カーハヤからこんにちは[/caption]

 懐かしいなあと思いながら、「ファンタ」を頼む。でも、思い直して「僕が買ってくるよ」と申し出る。運転してもらうんだ。チップのほかに飲み物ぐらいおごったっていい。

 ジョゼフは運転席の横に置いた木箱から「ファンタ」のガラス瓶を注意深く選び、本数を数えて3本取り出した。車を降りようとする僕に、それを持って行けと言う。

 木箱にまだ空ボトルが残っている。邪魔ではないか。「それも持って行くよ」と、木箱にあったボトルの全部を持って車を降りる。

 ドリンクを売っている売店で、10本ほどの空ボトルを全部渡し、「ファンタ」を3本買って車に戻った。

 僕が買って来た「ファンタ」が3本だけだと見ると、ジョゼフが怒り出した。「オレのボトルをどうした?」と言う。「店に置いて来たよ」と当然のように言うと、「あれはオレのボトルだ!」と言って売店へズイズイと歩いて行き、大騒ぎして7本の空ボトルを取り返して来た。

 怒っちゃっているので、僕がしたことの何が間違っていたのか、詳しく聞けないまま車は走り出した。

 ボトルのリターナブルのシステムを、僕らは「飲んだら店に返すもの」という風に理解しているが、ジョゼフの場合は違った。「オレのもの」なのだ。食器であり、財産である。今日の僕らが、「スターバックス」にマイ・タンブラーを持って行くように、ジョゼフはドリンク・スタンドに「ファンタ」のボトルを持って行く。

「ファンタ」を自分だけ飲むなら1本の、3人が飲むなら3本の空ボトルを持って行き、持って行った空ボトルと同じ本数のドリンク入りボトルを手に入れる。払うお金は、中身の分だけだ。

 そりゃ、怒るよね。マイ・ボトルを勝手に店に渡して来ちゃったんだから。10本の空ボトルを持って行ったら、10本の「ファンタ」を買って帰って来なければならなかったのだ。

 こういう意識だと、ボトルを公園に散らかすなんてこともあり得ないわけか。

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