食べ物記者 齋藤訓之

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コメの四原色

 光の三原色と言えばいわゆるRGBというやつで、赤・緑・青の三色を言う。宇宙の様々な色は、この三色の強弱の加減でできている。一方、印刷物の三原色と言えばCMY。シアン・マゼンタ・イエロー。藍色、赤紫色、黄色の染料を組み合わせることで、紙などの上に(ほとんど)あらゆる色が表現できる。ただし、黒々とした黒を表現するために黒の染料も加えて、実際の印刷やカラープリンターなどではCMYK(KはkuroのKではなく、たぶんblackのK。Bだとblueと混同するためか)の4色を使う。

[caption id="attachment_1231" align="aligncenter" width="192"]アオ アオ[/caption][caption id="attachment_1232" align="aligncenter" width="192"]アカ アカ[/caption]
[caption id="attachment_1233" align="aligncenter" width="192"]クロ クロ[/caption][caption id="attachment_1234" align="aligncenter" width="192"]シロ シロ[/caption]

 さて、神話にも三原色があると言う。

 随分昔に読んだ本だけれども、「日本人の神話的思考」(北沢方邦、講談社)という新書の中で著者は世界各国の神話に共通する三つの基本色として赤・白・黒を挙げている。

 実体としての色相(カラー・アスペクト)とは別に、その背景として色彩についての思考の様態(モード)がある。そして世界の諸民族のモードに共通して含まれる三基本色が、赤・白・黒なのだと言う。

 三色それぞれには意味がある。たとえばこんな意味。

 赤。血の色。従って生命、生命力を表す。それが流れる状態は、怪我として危機を表し、一方、月経や出産の際の血として誕生も意味する。さらに火の色として、災厄(野生の火)を表し、また文化(カマドの火)も表す。

 白。何もないこと。無垢。神聖さ。また太陽の光。昼。生命を宿す精液の色。子供を育む母乳の色。

 黒。闇。夜。悪、不純。火の消えた後の炭。朽ちて腐敗したものの堆積、つまり泥。地下。死。夜は、ただし性交渉のある夜でもあり、肥沃な黒土でもある。黒なくして次の生産はあり得ない。

 諸民族の色彩についてのモードは、民族によって、その三基本色であったり、それにいくつかの色を加えたものであったりする。

 そして、日本の場合の神話の基本色は、赤・白・黒にアヲを足した四基本色だとするのが、この著者の考えだ。

 アヲ。青葉の青。若さ。成長を表す。ただし青が青のままで終わると未熟であり、よろしくない。止まるべからざる成長の色というべきか。

 日本の神話四基本色的に、木材加工を見るとこうなる。生きている木(青木)。これを伐り倒す(黒木)。樹皮を剥く(赤木)。乾燥して磨き上げる(白木)。

 因幡の白兎。これは元々白かったという記述はないので、もとは意味的に黒兎だったと考える(子供の頃は青兎か)。鰐にかまれて血だらけの赤兎になる。大国主命に正しい治療を受けて白兎として完成する。

 一旦は死ぬ(黒)、あるいは血を流す(赤)。そうした危険な状態を経なければ、白として完成の域に達することはできない。

 また、誕生(赤)とそれを清め育む(白)のが、お祝いの紅白の幔幕。死(黒)を清める(白)のが、斎場の黒白の幔幕。赤い鳥居の基部は黒。手水を使う場所には青々と草が茂る。社殿は白く、鏡は白い輝きを放つ。

 お祝いに出す赤飯。これは元、白飯とともに供したのではとも。またさらに、赤、白以外に黒、青の飯(イヒ)もあったはずと言う。そもそも、赤飯は小豆を加えて染めたものではなく、もともと赤いコメ、黒いコメ、青いコメ、それぞれあったはずだと言う。

 南アメリカのいくつかの部族では、主食のトウモロコシについて、神話の基本色に沿った色の品種を揃えていて、その各色の粉を祭礼で使うという。その同じことが、かつて日本で、コメを使って行われていたはずだというのだ。

 それは一度見てみたいものだと思って、早20年。健康食品の「黒五ブーム」で黒米は見かけるようになったものの、赤米、青米にはなかなか出会わなかった。しかし昨年暮れ、ついにある農家から分けてもらった(写真)。

 本当にあったと、目で見てわかっただけでもうれしかった。

 お祝いの席では、この4種の飯を盛り合わせてみよう。

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