食べ物記者 齋藤訓之

農業、食品、外食に関するビジネスの記者・編集者、齋藤訓之(さいとう・さとし)のWebサイトです。

Zoom-Zoomと言われても……

zoom-zoom!

zoom-zoom!

 マツダのCMで「ズーム、ズーム」と連呼している。「Zoom-Zoom」は同社のブランド・メッセージで、このブランドイメージソングの曲名は「Zoom-Zoom-Zoom」だと言う。「Zoom-Zoom」とは何か?

 もう4年ほど前になるが、企業のブランド管理に関するセミナーで講演した際、約100名の来場者(企業各社のブランド戦略の担当者と、若干のブランド関連コンサルタントとマスコミ)に、「マツダのブランド・メッセージ『Zoom-Zoom』の意味を知っている方は?」と挙手を求めたところ、一人しか手が挙がらなかった。

 マツダが「Zoom-Zoom-Zoom」の曲を使い始めたのは、2001年秋の東京モーターショーなのだが、それから1年を経ていた。その後もこれの浸透の程度に興味があって、人に会うたび世間話でこの話をよくするのだが、「知ってる!」という人には未だに出会ったことがない。たいていの人が「へぇ」という。トリビアの泉でのような、感動を伴った「へぇ~♪」とはちょっと違う。「早いとこ本題に入ろうよ」の気持ちがこもる「へぇ」だ。

 zoomと言うと、たいていの日本人はズームレンズのズームを思い浮かべる。だがこのzoom-zoom、英語圏の子供が車や飛行機のおもちゃを使って遊ぶときに発する擬声語なのだ。日本語圏ならば、たいていの子供は「ブーン、ブーン」と言う。そうとわかれば、夢のある、なかなかよいメッセージのように思われる。

 もともとは、北米マツダが2000年に米国でのCMに使い始めたのだという。それを日本を含む全世界にそのまま導入している。

 米国人が「Zoom-Zoom」と聞いて感じるらしい、邪気のない、純真なあこがれや驚き、楽しさといったものと同等のものを日本人に感じさせるとしたら、「ブーン、ブーン」なのではないかなと思うのだが。

「マクドナルド」や「スターバックス」のパンを口に入れて「紙を食っているようだ」と表現する日本人によく出会う。一般に、日本人は咀嚼中に出る唾液の量が米国人よりも少ないのだと言う。だから、米国ではパサパサ、ザクザクしたドライな食品が好まれ、日本ではシットリ、モチモチした食品が好まれる。その米国で人気のある商品をレシピを変えずに日本に持ち込めば、「紙を食っているようだ」と言われることがある。

 米国のチェーンレストランが日本に進出したとき、進出の目的が「米国と同じものを日本人に食べさせる」ということであれば、本国のレシピは変える必要がない。しかし、「米国でと同じ質と量の人気を日本人から勝ち取ること」がミッションであれば、レシピになんらかの変更は加える必要があるだろう。かつて「吉野家」が台湾やChinaに進出した際には、彼らは豚の角煮丼を作った。Chinaでは牛肉にあまり人気がなく、豚肉の方が高い価値を持っていたからだと聞く。

 "When in Rome, do as the Romans do."(郷に入っては郷に従え)――ミッション(mission)が強くはっきりしている宣教師たち(missionary)の合言葉だ。

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