食べ物記者 齋藤訓之

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梶原拓前岐阜県知事のマスコミ対応

 岐阜県の梶原拓前知事が、県庁の組織的な裏金づくりを放置したと「プール資金問題検討委員会」から指摘されている。非常に興味深い。

 2004年に、当時知事だった梶原拓氏に「農業経営者」でインタビューを申し込んだことがある。立ち上がったばかりの「農林水産業から日本を元気にする国民会議」の共同代表幹事として、考えを聞きたかった。また、南米での農地展開という話も聞きたかった。

 しかし取材は断られた。理由がとても変わっていた。県庁職員からの電話で、「そのテーマに関する取材は、すでに他紙(誌)で終えているため」とのことだった。政治家や役所の世界には、そういう断り方が習慣としてあるのかも知れないが、私は取材をそういう言葉で断られたのは初めてだった。

 ある話題について、A誌で語ってしまえば、その後B誌、C誌から依頼があっても、もう語ることはない。このとき、B誌、C誌で実際にはどのような質問が出るかは関係ないようだ。というのも、「すでに発表を終えた」とするその媒体を、参照すべきものとして具体的には教えてくれなかったからだ。「A誌に載っている内容で不足であれば、その点については答える」ということではなかった。

 たとえて言えば、岐阜城の歴史について近しい人に一度存分に話してしまえば、他の人が大きさを聞きたいと思おうが、立地を聞きたいと思おうが、あるいは歴史についての説明に誤りがあればそれを指摘したいと思おうが、関係ないということ――私はそのように受け取った。つまり、梶原氏が自分で“言いたいこと”について検討することはあっても、メディアが“知りたい”“伝えたい”“質したい”と考えることには頓着しない人なのだと理解した。

 残念ではあったけれども、こちらとしても“発表記者”のつもりはないし、もちろん“提灯持ち”になるつもりも毛頭ない。2度ほどの依頼を断られた後、むしろ一種の薄気味悪さを感じてそれ以上アプローチしないことにした。

 「農業経営者」は小さな雑誌なので、岐阜県が裏金の使途の一つとしていた“ミニコミ”と同じ類のもの、ないしはそうなり得るものというような不名誉な誤解をしてくれたのかも知れない。もしもそうだとすれば、何とも腹立たしい限りだが、これは知名度を十分に上げられていなかった自分たちの責任と考えるべきだろう。

 いずれにせよ、今後、その梶原氏がどのようなマスコミ対応をしていくのか、興味津々だ。彼が記者たちをどう扱い、記者たちが彼をどう扱うのか。そしてどのような世論を生み、どのように晩節を彩っていくのか。

 どう転ぶにせよ、政治家や官僚にとって、もちろん企業にとっても、マスコミ対応の教材の一つには違いない。

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