食べ物記者 齋藤訓之

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忌まわしき「着氷」

[caption id="attachment_1504" align="alignright" width="192"]恐るべし冬の海 恐るべし冬の海[/caption]

 フィギュアスケート関係者には異論があると思うが、スケートの実況放送でのべつまくなしに垂れ流される「着氷」なる言葉の使い方が、嫌で、嫌で、たまらない。

 フィギュアスケートのテレビ放送などで言う「着氷」とは、「着地」のことらしい。英語で言えば、land、landing。「着く」先が「氷」なので、「着氷」と言い始めたらしいが、この言葉の使い方をする人たちは、恐らく「地」と「土」を混同している。

「着地」の意味で「着氷」という、この言葉の使い方に私が個人的に感じる印象は「無知」「無学」「言葉に対する無頓着さ」「エレガントの対極」「あほたれ」だ。

 私が知る「着氷」とは、こういうものだ。

 真冬。北の海を漁船が走る。船首を上下に大きく振りながら、波を乗り越え、漁場を目指して走る。ブリッジからその船首を固唾を呑んで見守る乗組員。

 と、その船首に白いものが付着し始める。それは、あっという間に大きな塊となり、船首の形をすっかり見えなくしてしまう。「着氷」が始まったのだ。

 乗組員が大急ぎで船首に向かい、氷の塊を掻き、たたき落としにかかる――と、思う間もなく、船体がバランスをくずして転覆。乗組員たちが、その極寒の海に投げ出され、船はあれよあれよと言う間に波間に没する。

 これは波しぶきが船体に「着氷」する例だが、空中の水滴、水蒸気が飛行機の機体に「着氷」し、墜落に至らしめることもあるという。

「着氷」。これほど忌まわしい言葉があるものか。

 フィギュアスケート関係者は、そのことを理解してのち、それでもなおかつ、股間すけすけの女性なりが「着地」することを、敢えて「着氷」と言うべきか、検討すべきだ。

 今までに「着氷」で何人の人々が死んだと思っているのか。

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