食べ物記者 齋藤訓之

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「宛」はよい言葉ではない

 たいへん恥ずかしいことながら、ちゃんと学習したことではない。でも、言葉遣いの正確な人たちの話し方を観察していて悟ったこと(いや、本当はこれも“ちゃんとした学習”の一つだとは思うけれど)。「宛」という言葉は、あまりよい言葉ではないらしい。

「私宛にお送りください」「弊社宛お願いします」などは言う。でも、以下は絶対に言わない。これらは、失礼もしくは無学な人の言葉遣いだと考えられているようだ。

「あなた様宛にお送りします」
「お宛名は?」または「お名宛は?」または「宛先は?」
「どなた様宛おうかがいしたらよろしいですか」
「御社宛でよろしいですね?」

 日本語では、自分以外の人に何か渡すのは、自分の子供など明らかに目下の者以外には、「差し上げる」のであって水平に移動して渡すのではない。「宛」はどうも、この水平移動のニュアンスらしい。押しつけたり、くっつけたり、ぶつけたりするニュアンスもありそう。ニュアンスどころか、やまと言葉としては「当て」と同じはずだ。手元に気の利いた辞書がないので正確ではないが、言葉遣いが正確な人たちの話し方からはそのようだとわかる。

 上記は以下のように言い換える。

「あなた様にお送りします」
「どなた様へお送りしたらよろしいですか?」
「どなた様をお訪ねしたらよろしいですか」
「御社へお送りしてよろしいですね?」

 こう考えると、そもそも「宛」などという言葉が必要なのは、ごく限られた場合だけだとわかる。

 電話口で「お名前様は?」と言っていた先輩もいて、これは「デパートみたい!」と最初びっくりしたものの、お客様(読者や書店さん)との電話だとそうもなりますね。

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