食べ物記者 齋藤訓之

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口を開けて食べるピチャピチャ喰いの人たち

[caption id="attachment_1525" align="alignright" width="192"]「ピチャピチャうるさいヮ」「おまえこそうるさい。ピチャピチャ食べちゃうぞワン!」 「ピチャピチャうるさいヮ」「おまえこそうるさい。ピチャピチャ食べちゃうぞワン!」

 食べる時に口を閉じない人がいる。あのピチャピチャという音を聞くと、思考が止まってしまう。感覚が麻痺するように、味も匂いも感じられなくなってしまう。彼らのピチャピチャ音のために、今まで何度、外でのランチを台無しにされたかわからない。なので、ピチャピチャ君たちに対しては、私は“食い物のうらみ”を抱いている。

 あの音。文字にするときは「クチャクチャ」と表現する人もいるようだけれど、それは口が開いている音とはちょっと違う。もっと湿った嫌な音がする。「ピチャピチャ」のほうがしっくり来る。ああ、嫌な音。

 金魚が口をパクパクやりながら食べているの見ても平気。犬があれと同様の音を立てて食べているのを見ても聞いても全く平気。それどころかむしろ可愛い。であるのに、人間がやると、どうして嫌な光景に見え、身の毛もよだつような音に聞こえるのだろう。不思議。大人になった今でも、“行儀が悪いと親のカミナリが落ちる”という記憶が残っていて、落ち着かなくなるのかもしれない。

 鼻炎など鼻に疾患のある人は仕方がないという意見もある。あるいはそういう場合もあるのかもしれない。

 でも参考までに。私は子供の頃、アレルギー性鼻炎だった。何のアレルギーかわからないけれど、よく夕方になると鼻がセメントで固められたように詰まったものだ。

 加えて、アデノイド(咽頭扁桃増殖症)。これは手術で切ったが、それまではよく口を開けて本を読んでいて、「ばかに見える」と叱られたものだ。

 アレルギーのほうは、田舎にいる間はときどき出た。面白いことに、上京したらピタリと収まった。でも、喜んでいたのは10年間ぐらいのことで、後にご多分にもれず花粉症になってしまった。

 というわけで、鼻づまりでは負けないよ(ばか)。その私に、口を閉じてものを食べる習慣が身に付いているのだから、たいていの人は、ピチャピチャ喰いを鼻が悪いせいにはできないはず。

 ピチャピチャ君には、鼻が詰まっているときも口を閉じて食べるコツをコーチしてあげてもいいんだけれども、やっぱりだめ。そういう人と一緒にいることが生理的に受け付けない。何しろ“食い物の仇”だから。ごめんね。自分で直してね。

 以下は、口を開けて食べる習慣が障害によるものでない限りと断りを入れた上でだが、ピチャピチャ君たちについて、私が個人の経験から思い込んでいること。もちろん、データをとって検証した事実ではない。半分は“食い物のうらみ”を晴らしたいがための悪口だと受け取っていただいてけっこう。

 すなわち、ピチャピチャ君たちは年齢を問わずわがままな人が多い。偉そう。万能感を抱く自信家で、ひとの言うことを聞かない。というか、周囲の人間への関心が希薄。だから、おいしいものがあると一人で食べてしまう。当然に、協調性がない。それで、学校でも会社でも浮いている。

 親なりそれに代わる人たちに注意してもらえなかったか、注意してもらっても聞く耳を持たなかったためにピチャピチャ喰いを続けてきたはずなのだから、そうなるのも仕方ないことに違いない。できれば、こういう人と一緒に仕事をしたくない。面接のときは、きっと茶菓を出してみることにしよう。

 百歩譲って、彼らの市民権を認めるとする。その場合は是非、「分ピチャ」を普及させてほしい。飲食店の座席は基本的に「禁ピチャ席」で、眺めの悪いところに「ピチャ席」を作る。「ピチャ席」はもちろん防音壁を設けて遮音する。

 防音壁を設ける資金がない店は「全面禁ピチャ」とすればいいが、これは「愛ピチャ家」からの反発を喰らう。偉そうでわがままな人たちからの反発は、さぞやっかいに違いない。そこで、「●●平米以上、あるいは●●席以上の飲食店は●●%以上の『ピチャ席』を設ける」として、小規模店に例外を認める形にするのがいいだろう。

 もちろん、私は小さなお店が大好きだ。

 私の友人にピチャピチャ君はいないはずだが、「実は私は隠れピチャピチャでした」と告白したい友人が、もしいた場合。君に告ぐ。次に私に話しかける前に、ピチャピチャ喰いをやめるようにトレーニングしてきたまえ。一緒にめしを喰うのはそれからだ。

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