ゲーム機から血の臭いを漂わせようと考えた人々

だめ~、ついらく~。 壊れた世界
だめ~、ついらく~。

「車が爆発するシーンで、ガソリンの臭いをさせられないか」「人が死ぬシーンで、血の臭いがさせられないか」――香りを使ったさまざまなビジネスを展開するピクセン(東京都千代田区)の漆畑直樹社長は、大手ゲーム機メーカーに香りを発生させる小さな装置を説明した際、そんなテーマを示された。

だめ~、ついらく~。

だめ~、ついらく~。

 大きな仕事になり得る話だった。彼らが持つ技術からすれば、難しいことでもない。

 しかし、帰りの電車の中で仲間と顔を見合わせた。もともと、香りを医療や福祉に役立てられないかというのが、創業のきっかけだった。たとえば、この小さな装置も、耳の不自由な人に携帯電話の着信を気持ち良く知らせるために開発したものだった。その考え方と、ゲーム機が血の臭いを漂わせることとは、いかにもかけ離ている。

 結局、断った。同時に、この装置の新規の売り込みをやめ、創業目的に合った香りの技術の研究開発に全力を挙げることにした。

 この大手ゲーム機メーカーは、人々になにを提供しようとしているのか。ユーザーをどこにつれていこうと考えているのか。あるいは、何も考えていないのか。人々は、どういう会社に金を渡しているのか。

現・バイオミメテクスシンパシーズ

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