「グラビア」と言いながら実はオフセット

想う伝える

「グラドル」と言ったら「グラビア・アイドル」。「グラビア」は、最近は雑誌などの印刷物の写真ページ一般を指す言葉になっているけれど、最近はオフセットに押されて、本当のグラビアはずいぶん減った。

グラビアの例(「週刊新潮」の口絵)。

グラビアの例(「週刊新潮」の口絵)。

 本来のグラビア印刷は、ローラー状のものの表面にエッチングなどの方法で凹みを作り、その部分に入ったインクを紙などの表面に刷るもの。

 凹みの深さでインクの量を加減し、濃淡を表現する。もともとの方法ではアミ点はないけれど、電子グラビアという方法では、アミ点の大きさと深さで濃淡を表現するので、アミ点はある。でも、オフセット印刷のアミ点とは大きさなどがだいぶ違う。

 グラビアは製版にものすごくコストがかかるので、少部数の印刷には向かない。でも、表現力と精度が高いので、絵画や写真の印刷に使われる。画集や芸術分野の写真集が高価なのはそのためだ。

 オフセット印刷で色彩を表現するには、シアン、マゼンタ、イエロー、黒(CMYK)の4色のアミ点を掛け合わせることで表現する。このアミ点は電子グラビアに較べると粗く、整然と並んでいるように見える。ページにルーペを当てて見れば、CMYKそれぞれがだいたい何%ずつ掛け合わせられているのかの見当が付く。

 オフセット印刷も、表現力に劣るわけではないけれど、アミ点の粗さ(線数)によっては限界がある。それに、最終的に紙に載るインクが薄いので、透けてしまうことがある。

 よく、写真の上に載せたスミベタの太文字や太罫にバックの写真が透けて見えることがある。色指定を手書きで行い、オフセット用のフィルムも手作業で作っていた頃は、スミベタは黒100%に加えてシアン50%を加えるなんていう指定をしていたものだけれども、DTPではこういう指定がとてもしづらい。

 しかし、オフセットはとにかく安価なところがメリット。

 かつては、写真や絵をメインにした出版物では、編集者はほとんど自動的にグラビアを選んだ。でも、その習慣を変えた先駆けは、恐らく新潮社の「FOCUS」(1981年創刊)だった。「写真週刊誌」と言いながら、あの雑誌はオフセットだった。それでコストを抑えた。

 古いタイプの編集者は、最初バカにしたのだという。その頃、写真の表現手段としては、オフセットは完全な市民権を得ていなかった。でも、「FOCUS」以降は、オフセットで写真を使うケースが増えてきた。

 面白いのは「FOCUS」の7年後に創刊の「AERA」。判型や厚さが「FOCUS」に似た体裁でありながら、また写真にオフセットを使うのがずいぶん普及した頃でもありながら、「AERA」はグラビアだった。しかも、どちらかといえば写真よりも、文字や写真ではない色彩的に単純な図表に重きがある雑誌なのに。

 新聞社の見栄なのかなというのは、私が勝手に抱いた感想。

 オフセットは、グラビアと違って訂正が利くのも編集上のメリットだった。刷版を作る前のフィルムに修正を加えてもらえばいい。写真の色合いも、1版のアミ点を洗ってやせさせたりして、調整ができた。

 DTPでデータ入稿が一般化した今は、そのようなフィルムの修正をしてくれる職人さんを、印刷会社はずいぶん切ってしまったらしい。だから、今はデータ入稿した後の修正は基本的に受け付けてもらえず、データを支給しなおして、4版やり変えということになる。

 これはかつてのグラビアと同じ。大部数の印刷物では、グラビアが復権してもよさそうに思えるが……。

 若い編集者で、グラビアを知らない人が結構増えてきている。そういう状況の中で、誰かが「このページはグラビアにしましょう」と言った場合、間違いが起こりやすい。「写真メインのページに仕立てましょう」という意味で言っているのか、「グラビア印刷を使おう」と言っているのか、よく確かめないと、後でえらいことになる。

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